介護にまつわるあれこれ22:フレイル予防とは

皆さんは「フレイル」という言葉をご存じでしょうか。
近年、高齢者の健康や介護予防に関する話題の中で、「フレイル」「フレイル予防」といったワードが頻繁に使われるようになっていますが、あまり聞きなじみがない方も多いのではないかと思います。
今回は、このフレイルについて解説していきます。

1.フレイルとは

「フレイル」は、英語の「frailty」に由来しています。
「frailty」は直訳すると「虚弱」「衰弱」「もろさ」といった意味を持つ名詞ですが、そこから派生して「フレイル」とは、「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」のことを言います。
人は高齢になるにしたがって、身体的・心理的・社会的などあらゆる側面において、何らかのストレスやダメージを受けたときに、元の状態に回復できる力が若い時に比べて低下するとされています。
たとえば、若いときには時間の経過で自然に治るような骨折も、高齢者にとっては歩行障害などの健康障害が残る可能性が高くなり、さらにそれをきっかけに要介護状態へと移行するリスクとなっていくというようなことは、よく知られていることです。
つまりフレイルとは、加齢によって心身の機能や社会とのつながりが弱くなった状態のことであり、言わば健康な状態と要介護状態の中間の段階にあたると言えます。
そのため、フレイル状態に陥らないための「フレイル予防」が、その先にある要介護状態を回避するためにも重要であるとされているのです。

2.3つのフレイルと「可逆性」

フレイルは大別すると以下の3種類に分けることができます。

①身体的フレイル
加齢や持病などに伴い運動機能等の身体機能の低下や衰えが見られる状態のことです。

②精神・心理的フレイル
うつ状態や軽度の認知機能の低下などが見られる状態のことを言います。
加齢や病気によるものもありますが、「定年退職」や「配偶者との死別」など高齢者が経験しやすいライフイベントをきっかけとした気力の衰えや意欲の低下が起因となることも少なくありません。

③社会的フレイル
加齢に伴う社会とのつながりの希薄化や、そこから波及して起こる孤立や経済的困窮などの社会的状態を言います。

この3つの状態はそれぞれ単独でも起こりますが、①~③のいずれかの状態になると、それがさらに別のフレイルを引き起こすというように、お互いに影響もし合います。
たとえば、身体的フレイルとして歩行障害があることで、活動や外出に対する意欲が低下してしまい、周囲との社会的なつながりが失われ、孤立へと発展することもあります。
しかし、フレイルには「可逆性」という特性があり、いったんフレイルの状態に陥っても、早めにその状態と向き合い、適切な取り組みを行うことにより、フレイルの進行を防ぐことができ、再び健康な状態に戻ることも可能です。

3.フレイル予防の3つのポイント

では、フレイル予防やフレイルからの回復のために、具体的にはどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。
フレイル予防は、日々の習慣と密接に結びついていると言われます。
予防の柱とされる以下の3項目を中心に、日々の習慣を見直すことから始めましょう。

①栄養…バランスのとれた食事を3食しっかり摂りましょう。
加齢によっても筋力は自然と低下していくため、特に筋肉量に影響するたんぱく質はしっかりと摂る必要があります。
また、水分もしっかり摂ることや、お口の健康に気を配ることも大切になります。
病気でもないのに年齢ともに体重が減って痩せてくるのは、食事がしっかりと摂れていない、あるいは栄養が足りていないサインである場合もあるので、体重の変化にも気をつけるとよいでしょう。
支援としては、市町村による介護予防事業などでは高齢者向けの栄養相談や歯科相談などがよく開催されていますし、レトルト食品や配食サービスを活用するなどして、調理の負担を減らす方法もあります。

②身体活動…ウォーキングやストレッチ、筋力トレーニングなど一人ひとりに合った無理のない方法で身体を動かす運動習慣を作りましょう。
ポイントは「今より10分多く身体を動かす」です。
身体を動かすことは、運動機能や筋力の維持向上だけでなく、食欲や心の健康にもつながります。
個人でウォーキングなどを行うことはもちろん、市町村や地域の活動グループなどが実施している高齢者向けの運動プログラムなどに参加してみるのもよいでしょう。

③社会参加…趣味活動やボランティア、あるいは就労などに取り組みましょう。
何らかの活動のために外出したり、他人とかかわりを持つことによっても、フレイルを予防することができます。
自分に合った、楽しみながらできる活動を見つけるとよいでしょう。
地域の通いの場など、市町村や地域による支援も増えています。

高齢化と長寿化が進む日本においては、高齢者がいかに老後をできる限り長く健康に過ごせるかが重要な課題のひとつとされています。

私たち一人ひとりにとっても、老後を健康に過ごすということは、高齢者本人にとっては生活の質(QOL)を保ち自分の望む生活を続けられることにつながり、家族にとっては介護負担の軽減へとつながります。
健康なうちから日々の生活習慣の中でフレイル予防に努めることが、将来の充実した生活に直結していると言うこともできるのです。

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