介護にまつわるあれこれ21:レスパイトケアって何?

皆さんは「レスパイトケア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
近年、高齢者の介護においては、家族などの「介護をする側」に対する支援の重要性がより着目されるようになっており、そのひとつがレスパイトケアです。
今回は、このレスパイトケアについて解説していきます。

1.レスパイトケアとは

「レスパイトケア」のレスパイトは、英語の「respite」からきており、単語としては「一時休止」「息抜き」「骨休め」というような意味があります。
介護におけるレスパイトケアもまさにこの意味であり、要介護者の家族として介護をする人(=家族介護者)が介護から一時的に離れて休息をとったり、息抜きやリフレッシュをするための支援やサービスのことを言います。

2.レスパイトケアの重要性

日本では昔から、高齢になった親などの面倒は家族でみるのが当たり前、という風潮がありました。
しかし1970年代以降は少子高齢化・長寿化が進み、介護が必要な高齢者の増加や介護期間の長期化、また介護をする側の若い世代の人口減少など、家族内だけで高齢者の介護を完結することは社会的にも今後ますます難しいと考えられるようになります。
そこで2000年から始まったのが、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みである「介護保険制度」です。
制度開始から20年以上が経過した現在では、介護とは、家族内だけで行うものではなく外部サービスも活用して行っていくもの、という認識がだいぶ広く社会に浸透してきたように思います。
それとともに、要介護者本人に対する援助だけではなく、介護する家族への援助も重要であるという考え方も徐々に広まってきました。
家族に介護が必要な人がいても、かつてのように自分自身の生活を犠牲にしてまで介護中心の日々を送ったり、心身に強い負担を抱えながら介護をし続けることは、家族介護者として良い状態とは言えません。
心身の健康を確保し、安定した経済基盤や、仕事・趣味などを通じた社会とのかかわりを維持したうえで、周囲と協力しながら介護に携わっていくことが、介護者本人のためはもちろんのこと、介護される要介護者にとっても良質な介護や生活へとつながることにもなるのです。
レスパイトケアは、そうした家族介護者の心身の休息や、気分転換のためにとても大切な支援・サービスであり、また必須のものであるとも言えるでしょう。

3.レスパイトケアとして利用できる介護サービスとは

では、具体的にレスパイトとして利用できる支援やサービスにはどのようなものがあるかと言うと、大まかには以下の3種類に分けることができます。
①介護保険サービス
・介護保険制度による要介護(要支援)認定を受けている必要があり、サービス対象はあくまでも要介護者本人となる ・認定されている要介護度(支援度)によっては受けられるサービスが限られる場合もある ・費用は介護保険が適用される部分については、一部自己負担で済む ・利用にあたってはケアマネジャーと事前に相談・ケアプランの作成が必要(緊急時を除く) ・主なサービスは「訪問介護」「通所介護〈デイサービス〉」「短期入所〈ショートステイ〉」など
②介護保険外(自費)サービス
・介護保険の適用がなく全額自己負担による利用となるが、要介護認定を受けていなくても利用でき、要介護者本人だけでなく家族介護者向けのサービスもある ・軽度の生活支援から中重度の介護までサービス対象が幅広く、サービス内容も多岐にわたる ・主なサービスとしては「家事代行」「付き添い(同行)サービス」「見守りサービス」など ・介護保険サービスの延長として保険外サービスを提供している事業者もある(訪問介護の時間延長や家事サービス等の追加、デイサービス後の宿泊〈お泊まりデイ〉 など)
③市町村による支援事業
・市町村が家族介護者向けに行う支援事業であり、各市町村によって実施の有無や内容は異なる ・主な内容としては「健康相談」「介護者交流会の実施」「要介護者家族への慰労金支給」「介護用品の支給や助成」など ・介護者どうしの交流の場は、市から委託を受けた社会福祉法人等が運営していることも多く、談話室の設置をはじめ、食事会や旅行(日帰り・1泊)などのイベント実施など、さまざまな内容がある
またレスパイトの利用形態としては、「単発(スポット)利用」と「継続(定期)利用」とに分けられるかと思います。
単発利用は文字通り、休息やリフレッシュが必要なタイミングでの1回ごとの利用になります。
本来、思い立ったときにすぐ利用できるのが理想形ですが、実際には事業所の空き状況などの兼ね合いもあり、特に、ふだんは利用していない介護保険の通所や短期入所サービスを利用しようという場合などは、かなり早めに予約して日程を押さえておかなければ利用できないこともあります。
ちなみにこうした不便さを解消するのが、1か所の事業所で訪問・通所・短期入所の3つの居宅介護サービスを一体的に受けられる「小規模多機能型居宅介護」や、そこに訪問看護も加わった「看護小規模多機能型居宅介護」といった「多機能型サービス」になります。
多機能型サービスでは、月ごとの費用が定額で、臨機応変に複数のサービスを組み合わせて利用でき、当日の変更も可能なので、ふだんは訪問介護やデイサービスを利用していて、レスパイトのために不定期でショートステイを利用したい、というような場合にはとても有用です。
一方、レスパイトの継続利用とはどのようなことかと言うと、レスパイトケアには、単発のリフレッシュや休息だけでなく、介護者の慢性的な負担の軽減も含まれます。

たとえば、
▪定期通院の付き添いは自費の同行サービスを利用してその間介護者は自分の時間を確保する ▪重度の要介護者であれば介護保険サービスの「夜間対応型訪問介護」や「定期巡回・随時対応型訪問介護」を利用することにより家族介護者は夜間しっかり休む ▪家事代行サービスを定期的に利用し、食事作りや掃除などの負担を減らす
といったように、介護や付随する家事などのうち、決まった部分に対して外部サービスを継続利用することにより、1日の中での介護時間を減らし、休息や自分のための時間にあてることができるようになります。

仕事や所用のためではないのに介護や家事を他にまかせて休んだり、要介護者を置いてレジャーや旅行などに出掛けることに最初は抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、家族介護者にとって休息や気分転換は、健全に介護を続けていく上でも必要なことであり、決して後ろめたく感じる必要はありません。
また、悩みや感じていることを誰かに話すだけ、あるいはそういった深い話をせずとも周囲の人々との交流や社会とのかかわりを持ち続けるだけでも、ストレスの発散や軽減になります。
このような介護におけるレスパイトケアの重要性を、介護をする側や受ける側はもちろん、その周囲にいる人も含めたひとりひとりが認識し、よく理解することが、要介護高齢者が増加する今後の社会においては大切になっていくと考えられています。

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