介護保険制度の基礎知識2:介護保険サービスを利用するには

ご自身やご家族が実際に介護保険制度による介護支援サービスを利用しようと思ったら、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。
ここでは、介護保険サービスを受けるまでに必要な手続きや流れを紹介します。

1.要介護(要支援)認定を受ける

介護が必要な状態になったとき、公的介護サービスを利用するためには、大前提として「要介護(要支援)認定」を介護が必要になった本人が受けなければなりません。
そのために、まずは介護が必要な方がお住まいの市区町村の担当窓口(介護保険課など)で、「認定の申請手続き」をします。
地域包括支援センターや居宅介護支援事業者、介護保険施設などでも申請の代行を行っている場合もあります。
すでに何らかの介護サービスを私費利用していたり、入院中や通院中に認定の申請をすることになった場合などであれば、利用中の施設や病院等で事前に相談したりアドバイスをもらったりすることもできるかと思いますが、そういった相談先が特にない場合は、まずはお住まいの市区町村の窓口か、地域包括支援センターに相談しながら、申請の手続きを進めるのがよいかと思います。

2.要介護(要支援)認定のための調査と判定

認定の申請を受けた市区町村は、認定のための「調査」を行います。
調査は、市区町村の認定調査員による「訪問調査」と、「主治医(かかりつけ医)の意見書」の2種類です。
訪問調査では、ご自宅(場合によっては入院先等)に認定調査員が訪問し、心身の状況について本人や家族からの聞き取りや観察を行います。
なお主治医の意見書は、申請を受けた市区町村が直接主治医に依頼することで作成されます。
この訪問調査の結果と主治医の意見書に基づき、「判定」が行われます。
判定は2段階に分かれており、一次判定はコンピューターによる自動判定になります。
これは、定められている70以上の基本調査項目を、訪問調査の結果と意見書に沿って入力していくことで判定されます。
次に二次判定として、専門家による「介護認定審査会」において、一次判定の結果や主治医の意見書、訪問調査での特記事項などを総合的に考慮したうえで、要介護度の最終判定が行われます。

3.認定結果の通知

市区町村は二次判定の結果に基づいて認定を行い、その結果を申請者に通知します。
通知される結果は「要介護認定」「要支援認定」「自立(非該当)」のいずれかです。
原則として、申請から30日以内に通知されることになっています。
逆に捉えると、申請から認定結果が出るまでに1カ月近くかかることにもなりますので、介護が必要かも、と感じ始めたら、早めに相談や申請手続きを進めていく必要があるとも言えるでしょう。

4.ケアプランの作成

要介護(要支援)認定を受けたら、すぐ自動的に介護サービスを受けられる、というわけではありません。
利用者一人一人のニーズや介護度に合わせた「ケアプラン(介護サービス計画)」を専門家に作成してもらう必要があります。
ここでちょっと複雑なのは、受けた認定の種類により、ケアプランの作成者が異なる点です。
要支援認定を受けた場合は、地域包括支援センターの職員と相談しながら介護予防のためのケアプランが作成されます。
一方、要介護認定を受けた場合には、これから介護サービスを受ける予定の事業者や施設のケアマネジャーと相談してケアプランを作成することになります。
つまり、どこの施設で介護サービスを受けるのか、利用者側があらかじめ選んだ上でないと、ケアプランの作成に取りかかれないことになります。
なお、公的介護保険で利用できる事業者や施設は各市区町村(保険者)で指定されているので、その一覧の中から選ぶ必要があります。
介護認定の相談や申請期間のうちから、候補となる施設の見学をするなど、認定後の施設選びを進めておくことでスムーズなケアプランの作成につなげることができると言えるでしょう。
ちなみにケアプランの作成に関しては、全額保険給付となるため、利用者の費用負担はありません。

5.サービスの利用を開始する

作成されたケアプランに納得・同意ができたら、サービス事業者や施設等との必要な契約を経て、ケアプランに沿った介護サービスの利用がスタートします。

6.ケアプランの見直しと要介護認定の更新手続き

ケアプランは一度作成したらずっとそのまま、というわけではもちろんありません。
利用者やその家族のニーズや心身の状況、あるいは介護度の変更などにより、随時見直されるべきものとされており、ケアマネジャーには初回のケアプラン作成後、そのプランの実施状況等の把握(モニタリング)をするため月に1度は自宅を訪問するなどして利用者との面談を行う必要があると義務付けられています。
そしてモニタリングの結果、プランの見直しが必要なようであれば、利用者やその家族と相談しながら、プランの変更を行っていきます。
また、要介護(要支援)認定にも有効期間が定められており、期間満了までに更新手続きをする必要があります。
有効期間は、初回認定の場合は認定申請日から原則6カ月、更新認定の場合は前回認定満了日の翌日から12カ月です。
利用しているサービス事業者や施設、要支援認定者の場合はケアプランを作成した地域包括支援センターに申請を代行してもらうと、負担が少なくて済みます。
更新手続きの申請後、調査から結果通知までの流れは基本的には初回認定と同様になります。
更新認定の結果、介護度が変更になった場合などは、これに応じてケアプランの見直しが行われます。

よく読まれている記事

PICK UP