介護保険制度の基礎知識4:介護保険サービスにはどんなものがある?

一口に介護保険サービスと言っても、介護保険制度で受けられる介護サービスには実にさまざまな種類があります。
また、要介護認定の区分によって、受けられるサービスが異なっていたりもします。
ここでは、サービスの種類とその内容について解説していきます。

1.介護サービスのおおまかな分類

まず、要介護認定の区分によって、正式にはサービス名に違いがあります。
要介護認定を受けた人に提供されるサービスは「介護サービス」、要支援認定を受けた人に提供されるサービスは「介護予防サービス」という名称になります。
要支援認定者に提供される「介護予防サービス」は、要介護状態に進むことを予防することを大きな目的として設置されているため、このような呼び方になっています。

また、要介護認定者に向けた「介護サービス」は、サービスを受ける人(利用者)の生活の拠点によって、次の2種類に分けて考えることができます。
自宅で生活しながら受ける「居宅介護サービス」と、介護保険制度に基づく施設(介護保険施設)で暮らしながら受ける「施設サービス」です。
なお、要支援認定者が対象の「介護予防サービス」のほうは、居宅でのサービスのみで、介護保険施設を生活拠点としたサービスはありません。
要支援認定は、必要な支援を受けながらも、自宅でほぼ自立して日常生活が送れる状態、というのが大前提だからです。
「介護予防サービス」=自宅で生活しながら受けるサービス、という捉え方になります。
まずはこの、「介護サービス」と「介護予防サービス」の違い、そして「介護サービス」の中の「居宅介護サービス」と「施設サービス」の違いを踏まえておくと、これから出てくるさまざまな介護サービスの違いや特徴が分かりやすくなるのではないかと思います。

2.自宅で生活しながら介護サービスを受けるとは

では、自宅で生活しながら介護サービスや介護予防サービスを受けるというのは、具体的にどういうことなのでしょうか。
大まかに、3つに分けて説明していきます。
まずイメージしやすいのは、自宅を訪問してもらう「訪問サービス」だと思います。
訪問介護や訪問看護というワードを、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
文字通り、訪問サービスを行っている事業所の介護士や看護師等が自宅にやって来て、必要なサービスを提供してくれる、というものです。
訪問サービスの種類としては、主に以下のようなものがあります。

・訪問介護(ホームヘルプサービス)
・訪問入浴介護/介護予防訪問入浴介護
・訪問看護/介護予防訪問看護
・訪問リハビリテーション/介護予防訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導/介護予防居宅療養管理指導

一方、訪問サービスに対して、利用者側が施設に出向いて受けるのが「通所サービス」や「短期入所サービス」というものになります。
「通所サービス」は日帰り、「短期入所サービス」は短期間の宿泊を伴うもので、サービスを受ける場所は自宅外の施設等になりますが、あくまでも自宅で暮らしている方が施設等を訪れて利用する形式なので、居宅サービスに含まれます。
「通所サービス」としては、

・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)/介護予防通所リハビリテーション

があり、自宅から送迎車などで施設等に通い、食事や入浴、リハビリなどをして日中を過ごすものになります。
また「短期入所サービス」としては、

・短期入所生活介護(ショートステイ)/介護予防短期入所生活介護
・短期入所療養介護(医療型ショートステイ)/介護予防短期入所療養介護

があります。
これは介護保険施設に宿泊して、日常生活上の介護または支援、医療型の場合は加えて医療的ケアや機能訓練などが受けられるサービスで、1回の連続利用日数は30日までという規定があります。

自宅で生活しながら受けられるサービスの3つめは、自宅での生活環境を整えるためのサービスです。
これは「福祉用具貸与」や「特定福祉用具販売」と言って、居宅介護や予防介護のための用具のレンタルや購入に対して、費用の一部が支給される制度になります。
なお、要介護度によって制度を利用できる用具が異なっていたり、また支給金額の上限などにも決まりがあります。

自宅で生活しながら介護や支援のサービスを受ける場合は、これらの居宅サービスを必要に応じて組み合わせて利用していくことになります。

なお、私費で入居する有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などで生活している場合も、入居している居室が自宅とみなされます。
その入居先の有料老人ホームや軽費老人ホーム(ケアハウス)等が「特定施設」の指定を受けていれば、そこで提供される日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話等は介護保険の対象となり、入居者が要介護(要支援)認定を受けると、その要介護(支援)度に応じて介護保険が適用されます。
これを「特定施設入居者生活介護」(要支援の場合は「介護予防特定施設入居者生活介護」)と言い、居宅サービスの1つに分類されています。
この「特定施設」の指定を受けている施設は、「介護付きホーム」「ケア付きホーム」などと呼ばれます。

3.施設サービスとは

自宅を離れて介護保険制度に基づいた「介護保険施設」に移り住み、そこで介護サービスを受けるのが「施設サービス」です。
施設は、どのような介護が必要か(介護中心なのか医療中心なのか、また必要な医療的ケアの程度)によって3種類に分けられます。

・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
「特養」の略称で呼ばれ、常に介護が必要で、自宅では介護が困難な人が対象の施設です。
要介護3以上に認定されていないと入所の対象になりません。
食事・入浴・排泄など日常生活全般の介護や健康管理、機能訓練などのサービスが受けられます。

・介護老人保健施設
「老健」の略称で呼ばれ、病状が安定し、在宅復帰を目指した機能訓練(リハビリ)に重点を置いた医療的ケアと介護が必要な人が対象の施設です。
入所期間の目安はおおむね3カ月以内で、医学的な管理のもと、介護や看護、リハビリを受けることができます。

・介護療養型医療施設/介護医療院
長期間にわたり療養(医療的ケア)が必要な病状にある人が対象の施設です。
現在、従来の介護療養型医療施設(病院)で、医療的ケアとともに介護を受けるかたちから、医療と介護(日常生活上の世話)が一体的に受けられる介護医療院への転換が進んでおり、2024年3月末で介護療養型医療施設は廃止される予定になっています。
介護医療院は日常的な医学管理や看取り・ターミナルケア等の医療的機能と、生活施設としての機能を兼ね備えた一体型施設という位置づけがされています。

自宅で生活しながらの介護が困難になったときには、状況に応じてこれらの施設サービスの利用を検討していくことになります。

以上のように、介護保険制度を利用して受けられるサービスにはさまざまな種類があります。
介護を受ける方の介護度やニーズに合ったサービスを適切に選ぶためには、それぞれのサービスの特徴や対象、またサービスごとの違いなどをよく理解することも大切になってくるのではないかと思います。

よく読まれている記事

PICK UP