介護にまつわるあれこれ14:介護保険外サービスとは

高齢者のための介護支援サービス、と聞くと、皆さんはどのようなサービスを思い浮かべますか?
介護保険制度によるサービスや、自治体が提供する支援事業など、まずは公的なサービスを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
公的サービスでは、介護保険の給付や自治体などの行政財源によってサービス費用の一部が負担され、利用者自身による費用負担は部分的なものになります。
これに対して、費用の全額を利用者自身が負担する介護支援サービスは、「自費サービス」「保険外サービス」などと呼ばれ、近年ではニーズの高まりとともに、こうしたサービスを提供する事業者や民間企業が増えています。
今回はこの保険外サービスについて解説していきます。

1.保険外サービスは必要?

今から約20年後の2042年頃に、日本の高齢者人口はピークを迎えることが予測されています。
日本の総人口は2010年を境に減少を続けていますので、人口全体における高齢者の割合も今後しばらくは増え続け、それに伴って高齢者のみ世帯や一人暮らし高齢者、認知症高齢者などの増加も見込まれています。
このような超高齢化社会の中でも、多くの高齢者が、重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるようにと進められている国の政策に、「住まい」「医療」「介護」「生活支援・介護予防」が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」がありますが、介護保険制度などの公的サービスだけではこのシステムを成立させることはできません。
公的サービスは、費用負担という面では制度的な保障がありますが、そのぶんどうしてもサービス内容や対象者が限定的になってしまいます。
特に、介護保険制度における「要介護認定」を受けるほどの介護度にない比較的自立した高齢者は対象外となることが多く、そのような高齢者の生活支援や介護予防としては地域における住民主体の取り組みやボランティアによる見守りなどといった支え合い、いわゆる「互助活動」が推進され、近年では徐々に活発になってきてはいるものの、それだけでもまた十分とは言えません。
このような「公的サービス」や「互助活動」では足りない部分を補完し、より充実した幅広い介護支援サービスを提供できるのが、自費利用による「保険外サービス」になるというわけなのです。
公的サービス、保険外サービス、そして互助活動、この3つを必要に応じて組み合わせて活用していくことが、これからの高齢者の生活に欠かせないことであると考えられています。

2.保険外サービスにはどんなものがある?

「保険外サービス」は、制度の枠組みにとらわれないぶん、高齢者やその家族のニーズを踏まえたさまざまな種類のサービスを提供することが可能です。
高齢者向けの介護サービスと言うと、加齢や病気によってできなくなった日常生活上の行為や動作を助けるもの、というイメージがまず浮かぶかと思います。
「保険外サービス」においても、公的サービスの延長や補完として、こういった日常生活上の介護サービスというものももちろんありますが、公的制度の枠組みにとらわれないぶん、さまざまな自立度あるいは介護度の高齢者とその家族のニーズに応えうる多様なジャンルのサービスが提供されています。
どんなサービスがあるのかと言うと、
 ▶家事代行サービス…料理や掃除、ペットの世話などを代行する
 ▶付き添いサービス…買い物や散歩、趣味の外出、外食、冠婚葬祭などに同行して必要な支援を行う
 ▶便利屋サービス…電球交換、家具移動、庭の草むしりなど自宅でのちょっとした困りごとに対応
 ▶見守りサービス…定期的な訪問や電話による確認と、別居家族(子供など)への報告連絡
 ▶理美容サービス…ヘアカット・カラー、スキンケアやハンドケア、メーキャップサービス 等
 ▶学習サービス…認知症予防や改善のための教材やコミュニケーションを中心としたプログラム
 ▶旅行サービス…介護スタッフが付き添う旅行サービス
など、日常生活を助けるサービスから娯楽やライフイベントのサポートまで、実に多岐にわたります。
高齢で、さらには介護や支援が必要な状態であっても、単に基本的な日常生活を充足させるだけになるのではなく、生きがいや楽しみを持ってその人らしく生き生きとした暮らしを続けられる、生活の質(QOL)を維持向上させるようなサービスは、介護予防や介護状態の維持改善にもつながると言われており、従来の介護サービス事業者だけでなく、さまざまな分野の企業等が参入してきています。
そして利用する高齢者も、「アクティブシニア」と呼ばれる元気で自立した方から要介護状態の方までさまざまです。
また高齢者本人だけでなく、家族に向けたサービスがいろいろと提供されているのも、公的サービスとの大きな違いと言えるでしょう。
最近は、共働きの子育て世帯がベビーシッターや家事代行などの自費サービスを活用することが一般的になってきていますが、今後は、高齢者のいる世帯でこういった保険外サービスを利用することが決してめずらしくない社会へと変化していくのではないかと思います。

3.保険外サービスは決して富裕層限定のサービスではない

全額が自費での利用となる保険外サービスは、公的サービスに比べると負担する費用が高くなることは避けられませんが、決して富裕層のみに向けたサービスというわけではありません。
保険外サービスは、一般に販売されている言わば商品であり、利用者=消費者が商品の内容とその対価に納得して購入するもの、と考えると、必ずしもぜいたく品ではなく、人によっては生活に必要なものとなります。
利用する一人一人が、一般的な商品やサービスを選ぶときと同じように、自身にとって必要なものか、またそれが納得できる価格かどうか、サービスの質は十分か、などの視点を持って保険外サービスを見極めることは、保険外サービス市場全体の健全な競争をうながし、より適正でリーズナブルな価格でのサービス提供にもつながっていくと考えられています。
また、企業の福利厚生の一環として、そこで働く社員が利用できる保険外サービスを企業向けに提供している事業者もあり、家族の介護負担の軽減や介護離職の予防という観点からニーズをとらえた、このような形態の保険外サービスも今後徐々に増えていくのではないかと思われます。

以上のように、保険外サービスは決して特別なものではなく、限られた人に向けたサービスでもないということがおわかりいただけたかと思います。
むしろ、公的サービスに比べて対象となる高齢者の範囲は広く、またサービス内容も個々のさまざまなニーズに対応していると言えるでしょう。
必要になるときに備えて、ご自身やご家族のお住まいの近くでは、どのような保険外サービスの利用ができるのか、調べておくとよいかもしれません。

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