介護にまつわるあれこれ11:ショートステイってどんなもの?

介護保険サービスのひとつに「ショートステイ」というものがありますが、皆さんはショートステイがどのようなものかご存じでしょうか。
今回は、このショートステイについて詳しく解説していきます。

1.ショートステイとは

「ショートステイ」の正式名称は「短期入所生活介護」と言い、自宅で介護や支援を受けながら生活している方が受ける「居宅介護サービス」の中の「短期入所サービス」のひとつになります。
この短期入所サービスとは、ふだん自宅で生活している高齢者が、短期間施設に宿泊して介護サービスを受けるというもので、その主な目的は、利用者ができる限り自宅での生活を続けられるよう、利用者本人の心身の機能や生活の質の維持向上と、介護にかかわる家族の身体的・精神的負担の軽減をはかることとされており、以下の4種類のサービスがあります。

①短期入所生活介護〈ショートステイ〉
短期間施設に宿泊し、食事・入浴・排泄などの日常生活上の世話や機能訓練、看護師による体調確認などを受けることができるサービスです。
利用できるのは、要介護1~5と認定された方になります。

②短期入所療養介護〈医療型ショートステイ〉
①に比べ、医療的ニーズのある方に向けた、医師が常駐する施設でのショートステイです。
日常生活上の世話や機能訓練などの介護サービスに加え、医学的管理のもとで医療的な処置や看護、リハビリテーションなどが受けられます。
利用対象は、要介護1~5に認定された方となります。

③介護予防短期入所生活介護
要支援1・2に認定されている方が対象のショートステイです。

④介護予防短期入所療養介護
要支援1・2に認定されている方が対象の医療型ショートステイです。
サービスの内容としては、宿泊に伴う食事や入浴の提供や日常生活上の介護・支援を受けながら、日中は趣味やレクリエーションのプログラムや季節ごとのイベントに参加したり、医療型では診察やリハビリも受けるなどして滞在期間を過ごすものになります。
なお、厳密には①の通称が「ショートステイ」なのですが、便宜上②の介護予防サービスまで含めたり、時には短期通所サービス全般のことを「ショートステイ」と呼んでいる場合もみられます。

2.短期入所ができる施設とは?

短期入所の施設は、利用するサービスが介護が中心の「生活介護」サービス(①や③)か、医療型と呼ばれる「療養介護」サービス(②や④)かによって受け入れ先が違ってきます。

●「生活介護」の場合
短期入所サービスのみを行っている「単独型」の施設と、他の介護保険サービスも行っている「併設型」の施設とがありますが、数としては併設型のほうが多く、全体の8割を占めています。
併設型の施設としては、自宅で生活する方を対象に通所サービスや訪問サービスを提供する「居宅介護サービス事業者」による宿泊設備の整った短期入所施設や、常時介護を必要とする方が移り住む施設である「介護老人福祉施設〈特別養護老人ホーム〉」などがあります。
なお施設ごとに利用定員が決まっており、定員15~20人の施設が最も多く、全体の3割程度となっています。
定員は多いところでも30人ほどで、定員10人未満の施設も少なくありません。

●「療養介護」の場合
併設型のみとなり、医学的管理の行える「介護老人保健施設」「療養病床を有する病院・診療所」「介護医療院」などの施設がありますが、入居型施設である介護老人保健施設(老健)の数が圧倒的に多く、実際の利用先も全体の95%以上が老健となっています。
また利用定員に関しては、併設型のため定数を決めずに、従来の入居型サービスの「空床利用」としている施設が多いのも特徴です。

3.短期入所の利用日数や利用目的は?

ふだん自宅で生活している方が短期間、施設に宿泊するショートステイですが、この「短期間」とは具体的にどのくらいの日数のことを言っているのでしょうか。
規定としては、生活介護、療養介護ともに「連続した利用日数は30日まで」となっていますが、統計調査によると、1カ月あたりの実際の利用日数の平均は、
 ・短期入所生活介護:約11日  ・介護予防短期入所生活介護:約6日
 ・短期入所療養介護:約8日   ・介護予防短期入所療養介護:約5日
という結果が出ています。
なお、これは1カ月の合計日数であり、1回あたりの連続利用日数の割合をみると、2~3日(1~2泊)の利用が40%程度ともっとも多くなっています。
これは、利用者側のサービス利用の目的(理由)が大きく影響していると考えることができます。
生活介護、療養介護のどちらにおいても、最も多い利用目的は「介護者の負担軽減や休息(=レスパイト)」で、全体の6~7割を占めているのです。
その次に多いのが、生活介護では「家族の外出」や「家族の体調不良」、療養介護の場合は「家族の外出」もしくは「リハビリ目的」となっており、主に家族のリフレッシュや外出予定などに合わせて、数日間滞在するケースが多くなっていると理解できます。

4.ショートステイは予約が取りにくい⁈ 通常ショートと緊急ショートとは?

レスパイトや事前にわかっている家族の外出、あるいは計画的なリハビリのための短期入所は、あらかじめケアマネジャーなどとも相談して「ケアプラン(介護サービス計画)」や「予防介護ケアプラン」に組み込んだうえで、日程を決めて施設に予約を取り、サービスを利用することになります。
短期入所サービスはどこも決して定員が多いとは言えないため、空きを確保するためには早めの予約が必要となります。
実際、7割程度の施設が利用の2カ月前から予約受付を開始しており、利用者の約半数は1~2カ月前に利用申し込みをしているという調査結果も出ています。
これがいわゆる「通常ショート」と呼ばれる、計画的な短期入所になります。

一方、介護する家族の体調不良や急な不在など、利用の直前や当日に急遽受け入れ先を確保して利用するのが「緊急ショート」です。
実際に、約半数が当日または前日の申し込みとなっており、それ以外もほぼ1週間以内の申し込みによって利用されています。
この場合は、ケアプランにはない利用をすることになるわけですが、担当ケアマネジャーなどに相談しながら、受け入れ状況に空きのある施設をあたることになります。
特に療養介護(主に老健)は空床がなかなか見つからない場合も多く、サービスの充足状況としてはまだまだ不十分と言わざるを得ないのが現状です。

5.短期入所の費用はどのくらいかかる?

短期入所サービスの費用は、施設の種類や、個室か多床室(相部屋)かなど居室のタイプによっても金額が異なるのですが、一例を挙げると、以下のような感じになります。
〈例〉短期入所生活介護で併設型施設の多床室利用の場合、1日あたり
   ・要介護1  6,454円   ・要介護2  7,205円   ・要介護3  7,985円
   ・要介護4  8,730円   ・要介護5  9,465円
   ・要支援1  4,830円   ・要支援2  6,010円
このうち、介護保険における自己負担割合(1~3割)に応じた金額を自己負担することになります。
これに対して、1か所の事業所で訪問・通所・短期入所の3つの居宅介護サービスを一体化して受けられる「小規模多機能型居宅介護」サービスや、そこに訪問看護も加わった「看護小規模多機能型居宅介護〈複合型サービス〉」といった「多機能型サービス」の利用者の場合は、利用回数にかかわらず月ごとの定額費用を1~3割負担するかたちになります。
〈例〉小規模多機能型居宅介護の場合、1カ月あたり
 ・要介護1  112,881円   ・要介護2  165,895円   ・要介護3  241,325円
 ・要介護4  266,345円   ・要介護5  293,680円
 ・要支援1  37,223円   ・要支援2   75,192円         ※地域により変動あり
  (要支援者は「介護予防小規模多機能型居宅介護」としての利用)
介護保険の適用には1カ月あたりの「支給限度額」が要介護度ごとに決まっており、それを超えた部分は全額自己負担になりますので、利用回数や、他の介護保険サービスも含めた利用状況によっては、多機能型サービスを利用したほうが少ない費用負担で済む場合もあります。
また、食費、宿泊滞在費、洗濯代、趣味活動の材料費などは保険適用外のため、施設が定めた料金を別途全額自己負担することになります。
ただし、食費と滞在費に関しては、所得など一定の要件を満たした場合には減免制度が適用される場合もあります。
なお、何らかの事情により、規定の日数である30日を超えて連続利用した場合、31日目からはサービス費用も保険適用外となり、全額自己負担となるため注意が必要です。

短期入所サービスは、介護する家族の負担軽減に大きな役割を果たすサービスのひとつですが、利用者本人にとっては短期間とはいえ自宅を離れ、ふだんと違う環境で数日過ごすものであり、慣れないうちは利用することに不安や抵抗を感じることもあるかもしれません。
施設によって設備や部屋のタイプ、日中の活動プログラムなども違いますので、事前に施設の特徴や雰囲気をよく理解し、利用者本人の希望に沿った施設を選ぶことで、安心して快適に滞在期間を過ごせるようにできるとよいのではないかと思います。

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