介護にまつわるあれこれ10:デイケアってどんなもの?

さまざまな種類がある介護保険サービスのうちのひとつである「デイケア」、皆さんはどのようなものかご存じですか?
今回はこのデイケアについて、詳しく解説していきます。

1.デイケアとは

「デイケア」の正式なサービス名称は「通所リハビリテーション」です。
介護保険における「通所サービス」とは、自宅で生活する方が施設に出向いて利用するサービスのうち「日帰り」のものを言い、デイケアは、簡単に言えば、指定の施設に通って日帰りでリハビリテーションを受けるサービスになります。
ここで言うリハビリテーションとは、「心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために必要な理学療法や作業療法その他の機能訓練」のことで、医師の指示に基づいて行われます。

2.デイケアを受ける場所とサービス内容は?

デイケアを受けられる施設とは、介護保険法の基準に沿ってリハビリ専用の所定の部屋を設置し、専任の常勤医師と必要な療法士等が配置されている「介護老人保健施設」「病院・診療所」「介護医療院」のいずれかになります。
利用者は施設の送迎車などで自宅から施設に通い、リハビリをはじめとしたサービスを受けるわけですが、デイケアで行われているリハビリの内容には、主に以下のような種類があります。
●機能回復訓練…加齢や疾病の影響で低下した心身の機能を維持回復するための訓練。
  〈例〉体力向上訓練、筋力向上訓練、認知機能改善訓練、嚥下訓練、言語機能訓練 など
●基本的動作訓練…立つ、座る、歩くなどの基本的動作を維持回復するための訓練。
  〈例〉姿勢保持訓練、歩行訓練、階段昇降練習、移乗動作訓練 など
●応用的動作訓練…食事、入浴、排泄などの日常生活動作や、調理、掃除、買い物などの家事動作を維持回復するための訓練。
  〈例〉食事行為練習、入浴行為練習、調理行為練習、買い物練習 など
●社会適応練習…住環境や福祉用具の使用、仕事や余暇活動、対人コミュニケーション力など、より社会性の高い生活に適応するための訓練。
  〈例〉福祉用具の使用訓練、就労環境への適応訓練、対人関係練習 など
リハビリと言うと、体操や運動、あるいは手先の訓練作業などをイメージしがちですが、高齢者の日常生活の自立を助けるためのリハビリが目的のデイケアでは、そういった身体機能のリハビリだけはなく、利用者の生活状況や目標に沿ったさまざまなリハビリテーションが行われています。
なお、デイケア施設の多くが、リハビリだけでなく、介護職員等を配置して食事の提供や入浴の介助、レクリエーションの実施などのサービスもあわせて行っており、利用者の1日における滞在時間で最も多いのは6~7時間となっています。
その一方で、診療所など食堂や入浴の設備がない施設では、機能回復訓練や動作訓練を中心としたリハビリのみを1~2時間程度で行うという形式のところもあります。

3.デイケアを受けられる対象者は?

デイケアを受けられるのは、介護保険における要介護認定もしくは要支援認定を受けている人で、医師によりリハビリが必要と判断された人になります。
リハビリが必要となるきっかけは人によりさまざまな傷病がありますが、やはり脳卒中と骨折の割合が高くなっています。
なお、要支援認定の場合は「介護予防通所リハビリテーション」というサービス名称になり、介護状態にならないための生活機能の維持向上を目的としたリハビリを行います。

4.デイケアに通う回数や期間は?

デイケアでは、医師の指示のもとに作成された「通所リハビリテーション計画書」により週の通所回数やリハビリの内容が決定します。
統計によると、要支援者では週1~2回の利用が95%以上、要介護者では週1~3回の利用が約90%を占めているという調査結果が出ています。
また、リハビリ計画にはそれぞれ達成目標が設定されており、その目標を達成するとリハビリは修了となるわけですが、デイケアの利用開始から修了までの期間がどのくらいかと言うと、全体の約半数が1年以内に修了しているという調査結果も出ています。
ちなみに、デイケアを修了した要介護認定の人の約7割は、その後通所介護(デイサービス)を利用しているということが、同じ調査からわかっています。
なお、デイケアの利用期間中にも、訪問介護と併用している人が3割、デイサービスと併用している人が3割など、他の介護保険サービスと組み合わせて利用している方も少なくありません。
こういったサービスの選択に関しては、ケアマネジャー等と相談しながら「ケアプラン(介護サービス計画)」を作成する中で決定していくことになります。

5.デイケアの費用はどのくらいかかる?

介護保険におけるデイケアのサービス費用は、地域によって多少の違いがありますが、おおむね以下のようになっています。
要介護認定の方は、1回(1日)ごとの費用設定になっており、たとえば1日7~8時間未満の利用で、
・要介護1   8,200円   ・要介護2  9.715円   ・要介護3  11,255円
・要介護4  13,060円   ・要介護5 14,830円
といったように要介護度別に金額が設定されています。
一方、通所の頻度が多くなることがあまり見込まれないことから、要支援認定の方は以下のように、利用回数や時間数にかかわらず月額での設定になっています。
・要支援1  22,233円/月   ・要支援2  43,309円/月
いずれの利用者も、このサービス費用のうち、各々の自己負担割合(1~3割)に応じた金額を負担します。
この自己負担割合で利用できる金額には「支給限度額」という上限が要介護度ごとに定められており、上限を超えた部分は全額自己負担となりますが、デイケアの場合は、週3日のペースで利用したとしても、この上限を超えることはまずないかと思われます。
ただし、他の介護保険サービスと併用している場合は、そちらの費用と合わせると上限を超える場合もあるので注意が必要です。
また、食費やおやつ代、レクリエーション等の活動に伴う実費などは介護保険の適用外となるため、各施設が定めた料金を全額自己負担というかたちになります。

6.デイケアとデイサービスの違いは?

ちなみに、デイケアと似た名称のサービスに「デイサービス(通所介護)」があります。
(デイサービスの詳しい解説は「デイサービスってどんなもの?」をご参照ください。)
どちらも「通所型サービス」であり、デイサービスでも「生活機能の維持や向上を目的とした機能訓練」が行われていますが、デイケアとデイサービスでは一体何が異なるのでしょうか。
最大の違いは、デイケアにおけるリハビリテーションには医師の指示が必要であるのに対し、デイサービスでの機能訓練には医師の指示は必要ないという点になります。
また、デイサービスは在宅で生活する要介護認定の方の日常生活の一部として、期間が定められることなく永続的に利用できますが、デイケアの場合は、リハビリの目標が達成されれば通所が修了となる、一定期間の利用を前提としています。
デイケアにおいても、デイサービスと同様に食事や入浴の提供や、日常生活上の介護、レクリエーションなどのいわゆる介護サービスが行われていることが多いため、この2つのサービスは混同されやすいのですが、デイケアの目的はあくまでも一時的なリハビリテーションの実施にある、と捉えると違いがわかりやすいかと思います。

高齢者に限らず、病気などで心身の機能が低下してしまった後でも、リハビリテーションを通じて自立してできることがふえたり、活動の幅が広がれば、それはとても喜ばしいことです。
ただし、そこに至るまでのリハビリの過程は必ずしも順調とは限りませんし、決して楽しく簡単とも言えないことも多いでしょう。
取り組む本人も、その様子を見守る家族も、時にはつらく悲しい気持ちになってしまうこともあるかもしれません。
これらのことを踏まえると、デイケアでは、利用者本人がモチベーションを保って通所でき、目標に向かって明るく前向きに取り組めるよう、ニーズや希望に沿った施設を選ぶとともに、主治医やリハビリの担当者、ケアマネジャーなどともよく相談しながら、それぞれの状況やペースに合わせたリハビリを進めていくことが大切になってくるのではないかと思います。

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