介護にまつわるあれこれ9:デイサービスってどんなもの?

介護保険サービスにはさまざまな種類がありますが、その中でも「デイサービス」という言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
ここでは、デイサービスとは一体どのようなものなのか、詳しく解説していきます。

1.デイサービスとは

「デイサービス」とは、言い換えると「通所介護」サービスのことです。
そもそも介護保険における「通所サービス」とは、自宅で生活する方が施設に出向いて利用するサービスのうち、「日帰り」のものを言います。
施設において、日帰りでの介護サービスを提供するのが、通所介護すなわちデイサービスとなります。
デイサービスは、介護が必要な状態になっても可能な限り自宅で自立した生活を送れるよう、生活機能の維持・向上を目指して必要な日常生活上の世話や機能訓練といった介護サービスを提供することにより、利用者本人の社会的孤立感の解消や心身機能の維持、利用者家族の身体的・精神的負担の軽減を図ることを主な目的としています。

2.デイサービスの場所と内容は?

デイサービスを提供するのは各種ある介護サービス事業者のうちの「通所介護施設」です。
「日帰り介護施設」「デイサービスセンター」などとも呼ばれています。
利用者は施設の送迎車などで施設に通い、介護サービスを受けます。
1日の標準的な滞在時間は日中7~8時間未満とされており、具体的なサービス内容としては以下のようものがあります。

●送迎車による自宅から施設までの送迎
通所の手段としては、施設側による自宅までの送迎が原則とされていますが、施設によって使用される送迎車に違い(普通車両、介護車両、リフト付き車両 等)があるため、利用者の介護度に対応している施設を選ぶ必要があります。
なお送迎費はサービス利用料に含まれています。

●食事や入浴の提供と日常生活上の介護
すべての通所介護施設には食堂の設置が義務付けられており、昼食やおやつが提供されます。
ただし、食費は介護保険の適用外であるため、各施設で決められた実費を全額自己負担となります。
また入浴に関しては、入浴設備のある施設とない施設があるため、デイサービスでの入浴を希望する場合は入浴設備のある施設を選択する必要があります。
さらに入浴設備にも一般浴(個浴・大浴)、リフト浴など施設によって違いがあるので、希望に沿った設備を備えているか確認するようにしましょう。
その他、利用者の介護度やニーズに応じて、食事・入浴・排泄等の日常生活上の介護が受けられます。

●看護師や保健師などによる健康状態の確認や日常動作機能訓練
利用者全般に対しての血圧測定などの体調確認、服薬管理、口腔内の健康チェック等が多くの施設で実施されているほか、個別に必要な医療処置は看護師などの医療職が行います。
また、通所介護施設では「機能訓練室」の設置と1名以上の「機能訓練指導員」の配置も義務付けられており、日常生活に必要な心身の機能の減退を防止するためのさまざまな「機能訓練」が実施されています。
座る・立つ・歩くなどの身体機能の向上を目的とするもの、料理や掃除あるいは入浴動作など日常生活で必要な生活機能の向上を目的とするもの、認知機能やコミュニケーション能力の維持向上を目指すものなどがあり、集団もしくは個別で利用者に合わせたプログラムが実施されています。
●レクリエーションなど高齢者どうしの交流
季節に合わせたイベントや、カラオケなど集団でのレクリエーション、また趣味や特技が生かせる個別活動など、他の利用者とも交流しながら楽しく過ごすための活動が様々用意されています。
機能訓練的な意味合いを兼ねる内容のものも多く、施設ごとに工夫や特徴が見られます。

一般的なデイサービスの1日の流れとして、一例を挙げると以下のようになります。
  9:00送迎車にて施設着
朝の内服確認や血圧測定など健康状態の確認を受ける
朝の内服確認や血圧測定など健康状態の確認を受ける
 10:00入浴、散歩、機能訓練、個人活動など
 12:00昼食
 13:00レクリエーション、個人活動、散歩、機能訓練など
 15:00おやつ
 16:00送迎車にて帰宅へ
また施設によっては、独自の特色を打ち出しているところもあります。たとえば、
・運動機能訓練に特化したデイサービス(趣味活動などは行っていない)
・生活機能訓練に力を入れていて、外出や外食、調理などのプラグラムを行っているデイサービス
・入浴設備を充実させている施設
・バイキング形式の食事を取り入れている施設
など、注力するポイントを絞ってサービスを提供している施設もありますし、民間の事業者になりますので、施設によって雰囲気もそれぞれ異なってきます。
利用の際には、利用者本人や家族の希望やニーズに合ったサービス内容になっているか、施設やスタッフの雰囲気は合いそうかなど、事前に見学するなどしてよく確認するようにしましょう。

3.デイサービスの種類と対象者は?

介護保険におけるデイサービスにはいくつか種類があり、施設の特徴や利用方法に違いがあったり、利用できる対象者もそれぞれ違ってくるので注意が必要です。

●通所介護〈デイサービス〉
一般的なデイサービスセンターで、上で述べたような介護サービスを提供しています。
比較的規模が大きく、送迎エリアも隣接した市町村までなど広めに設定されていることが多いです。
要介護認定で要介護1~5と認定された人が利用できます。

●地域密着型通所介護〈小規模デイサービス〉
市町村が主体の「地域密着型サービス」におけるデイサービスで、利用定員が18人以下と小規模なのが大きな特徴です。
サービス内容は通常規模のデイサービスと同様で、やはり要介護1~5と認定された人が利用できますが、原則として施設のある市町村内に在住の方が対象となります。

●認知症対応型通所介護〈認知デイ〉
同じく「地域密着型サービス」のひとつですが、こちらは認知症と診断された方が対象のデイサービスになります。
サービス内容は基本的には他のデイサービスと同様ですが、認知症の方に特化した専門的なケアや対応が行われています。
認知デイは、要介護・要支援認定のいずれかを受けていれば利用対象となります(要支援の場合のサービス名称は「介護予防認知症対応型通所介護」となります)。
地域密着型サービスのため、やはり原則として施設のある市町村内に在住の方が対象となります。
以上の3種類の「通所型サービス」については、サービス費用が1回あたりの金額で設定されています。

一方、サービス費用が月ぎめの定額になっている以下のような「多機能型サービス」もあります。

●小規模多機能型居宅介護/介護予防小規模多機能型居宅介護
「地域密着型サービス」のひとつで、1か所の事業所が、利用者の状況や選択に応じて訪問・通所・短期入所の3つの居宅介護サービスを組み合わせて一体的に提供するサービスです。
デイサービスはこのうちの通所の部分に含まれています。
デイサービスの規模や内容自体は上述した「小規模デイサービス」と同様ですが、同一事業所で訪問介護や短期入所(ショートステイ)などと組み合わせて利用することができ、また費用も定額のため、利用回数が多くなっても負担が増えない、というのが特色になります。
事業所のある市町村に住んでいて、要介護・要支援認定のいずれかを受けていれば利用することができます。

●看護小規模多機能型居宅介護〈複合型サービス〉
同じく「地域密着型サービス」で、上記の「小規模多機能型居宅介護」の内容に訪問看護サービスも加わったものになります。
要介護1~5に認定されていて、医療的ニーズのある方が利用対象となります。

実際に利用するデイサービスを決定する際には、自身がどのサービスの対象であるかを確認したうえで、その中から希望に合った設備やプログラム内容を提供している施設を選んでいくことになります。

4.デイサービスのスタッフの職種は?

デイサービスの職員は以下のような職種で構成されており、職種によっては人員配置の規定があります。
・介護福祉士/ヘルパー(介護員)…介護の有資格者であり、施設の規模により規定の配置数は異なるが、介護がメインであるデイサービスでは最も人数比率の多い職種。送迎等も行う。
・看護職員(看護師や准看護師)…医療処置等を行うとともに、介護業務も兼務することが多い。通常規模のデイサービスでは1人以上の配置が必要。
・生活相談員(社会福祉士 等)…利用者の相談窓口や関係各所との調整役で、1人以上の配置が義務付けられている。介護職(介護福祉士)が兼務していることもある。
・機能訓練指導員…理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師のいずれかの資格を有する者で、1人以上の配置が義務付けられており、ケアプランに基づいた機能訓練を行う。
・施設管理者…施設の責任者。特に資格等は必須ではないが、認知デイの場合は、厚労省の定める研修を修了した者でなければならない。
・その他の職員…事務員、送迎ドライバー、資格を有さない介護補助スタッフ等、施設により異なる。
介護業界全般において、労働力の確保も重要な課題の一つとされていますが、可能な部分は兼務や、パートなどの非常勤スタッフを活用するなどもしながら、各施設スタッフの確保につとめています。

5.デイサービスに行く回数は?

では、一般的にデイサービスとは、どのくらいの頻度で通うものなのでしょうか?
実は、通う回数に関しては、特に規定や制限はありません。
あくまでも、利用者一人一人の必要度や家族の状況等に合わせて、ケアプラン(介護サービス計画)を考える中で決まっていくものだからです。
ただし、介護保険での利用には要介護度に応じてそれぞれ上限(支給限度額)があるため、それを超えた部分に関しては全額自己負担となります。
それもあってか、実際には週2~3回の利用が全体の半数程度を占めているという調査結果も出ていますが、一方で週5回以上の利用者も全体の15%程度にのぼっています。

6.デイサービスの費用はどのくらいかかる?

先ほども触れましたが、デイサービスの費用設定には、サービスによって2つの種類があります。
1つ目は、1回(1日)ごとの費用設定のもので、「デイサービス」「小規模デイサービス」「認知デイ」の各サービスがこれにあたります。
たとえば「デイサービス」の場合、1日(7~8時間未満)あたりの費用は、
・要介護1   6,995円   ・要介護2  8,255円   ・要介護3  9,570円
・要介護4  10,875円   ・要介護5 12,196円
といったように要介護度ごとに金額が設定されています(地域により多少の違いがあります)。
このうち、利用者は各自決められた負担割合(1~3割)に応じた金額を自己負担することになります。
〈自己負担額の例〉
・要介護1で自己負担割合が1割 ⇒ 1回約700円
・要介護5で自己負担割合が3割 ⇒ 1回約3,658円
つまり利用回数に応じて費用負担が増えるわけですが、それが1カ月あたりの「支給限度額」を超えてしまうと、超えた部分については全額自己負担となります。
デイサービスだけを利用するのであれば、限度額の範囲内に収めるには月何回まで、という計算も簡単ですが、実際には他の介護保険サービスと併用される方も多いため、負担金額の計算はもっと複雑になりますし、利用回数が増えれば増えるほど、費用がかさむことになります。

一方、もう1つの料金設定は、月ごとの定額制です。
先ほど紹介した「多機能型サービス」で適用されています。
たとえば「小規模多機能型居宅介護」の場合、1カ月につき、
 ・要介護1  112,881円   ・要介護2  165,895円   ・要介護3  241,325円
 ・要介護4  266,345円   ・要介護5  293,680円   (地域により多少の変動あり)
というように要介護度ごとに決められており、この1~3割を各自の自己負担割合に応じて負担することになります。
多機能型サービスはこの定額費用で、デイサービス以外にも訪問・通所・短期入所のサービスを回数の制限なく利用することができるため、利用回数が多い場合には、こちらのほうが全体の出費を抑えられる場合もあります。

なお、どのデイサービスを利用する場合でも注意しなければいけないのが、サービス費用に含まれないいわゆる実費負担の部分です。
毎回の食事代やおやつ代をはじめ、制作活動の材料費、おむつ代、ヘアカット等の理美容サービス費などはデイサービスの費用には含まれていないため、別途全額を自己負担することになります。
また、施設によっては、ご家族の帰宅時間等に合わせて一般的な1日7~8時間よりも長く滞在できる延長サービスや、そのまま宿泊できるいわゆる「お泊りデイ」のサービスを提供しているところもありますが、これらの滞在延長サービスも別途利用料がかかります。
こういった保険適用外の部分の料金に関しては、各施設が独自に金額を設定できるので、同じ地域で同じサービス名目であっても施設によって金額に差が見られることが多々あります。
食費などは、料金の差が中身の差になっていることも多いので、どのような食事が提供されているのかなど、内容をあらかじめ確かめておくことも大切になります。

以上のように、利用すれば1日の大半を過ごすことになるのがデイサービスです。
それを週に数回以上利用するとなれば、利用者に合った環境で楽しく充実した時間を過ごせるよう、またご家族の方には安心して介護を任せられるひとときとなるよう、利用者本人や家族のニーズ・希望に合ったサービスや施設を選ぶことがとても重要になってきます。
デイサービスに関する知識と理解をしっかり持っておき、いざと言うときに自ら主体的に選択することができるといいですね。

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