介護にまつわるあれこれ8:訪問看護ってどんなもの?

高齢者の介護における訪問サービスには、いくつかの種類があります。
今回は、「訪問看護」について詳しく解説していきます。

1.訪問看護とは

そもそも「看護」とは、傷病者の療養上の世話や診療の補助などを行うことを言いますが、それに「訪問」が付いた「訪問看護」は、病気やケガによって在宅で継続して療養を受ける必要がある状態の人に対して、看護師等の有資格者がその人の居宅において療養上の世話や必要な診療の補助を行うことを言います。
訪問看護自体は、高齢者に限らず、在宅療養において看護が必要な人すべてに提供される医療サービスのひとつであり、実際に小児をはじめとした40歳未満の方(介護保険対象外の方)の利用も全体の約35%にのぼります(令和元年の調査による)。
利用者の年齢や疾患、状態によって医療保険か介護保険のいずれかが適用されるしくみになっており、40歳以上の介護保険被保険者では、要介護・要支援認定を受けている場合は、原則として医療保険よりも介護保険の給付が優先されます。
ただし、要介護・要支援認定を受けていても、末期がんや特定難病患者、もしくは急性の症状で主治医の指示があった場合など、限定的に医療保険の適用になるケースもあります。

2.訪問看護スタッフはどこから来るの?

医療保険・介護保険にかかわらず、訪問看護のサービスを提供できるのは、「病院・診療所」または「訪問看護ステーション」のいずれかの施設と決められています。
病院や診療所の場合は、規模の大きい病院ですと「訪問看護部門」などといった専門部署が設置されていることもありますし、診療所などでは外来業務の一環として訪問看護を提供していることもありますが、いずれにしてもそこで訪問看護を担当する看護職(看護師・准看護師・保健師・助産師)が主治医の指示のもと利用者のご自宅を訪問して必要な看護を行います。
一方、訪問看護ステーションは、看護職やリハビリテーションを担当する療法士(作業療法士・理学療法士・言語聴覚士)などが属する訪問看護の拠点(事業所)であり、利用者のかかりつけ医である外部の医師と連携し、その指示に基づいて必要な訪問看護を行います。
なお全国における施設数としては、病院・診療所対訪問看護ステーションの比率は1:10程度と圧倒的に訪問看護ステーションのほうが多くなっており、なおかつ介護保険利用での訪問看護を行っている病院・診療所は年々減少傾向にあるとの統計結果も出ています。

3.訪問看護を利用するには?

訪問看護には主治医の指示が必須となります。
訪問看護の利用を始めるきっかけとしては、入院や通院を続ける中で、自宅療養にあたり訪問看護の必要性を感じた医師等から利用を提案されるというケースが多いかと思いますが、もし自ら訪問看護を希望する場合も、まずは主治医に相談しましょう。
医師により訪問看護が必要と判断されると、かかりつけや入院先の病院・診療所等が訪問看護業務を行っており、なおかつ自宅が訪問エリア内であれば、同一施設からの訪問が可能です。
かかりつけでは訪問看護を行っていない場合や、入院先が遠方で退院後の自宅は訪問エリア外であったというような場合は、主治医から自宅近くの訪問看護ステーションへ指示書を出してもらうことにより、連携して訪問されます。

4.訪問看護でできること

では、自宅で行ってもらえる看護には、一体どのようなものがあるのか見ていきます。
看護の内容は、大きく分けると「療養上の世話」と「診療の補助(医療行為)」に分類されます。
訪問サービスでは、訪問時間に限りがあることもあり、療養上の世話にあたる食事・排泄・清潔保持など日常生活の援助は訪問介護サービスのほうで行われることも多いですが、必要や状況に応じて訪問看護師が行うこともあります。
一方、医療行為にあたる看護業務としては以下のようなものがあります。
・病状観察(検温、血圧測定等)・本人や家族への療養指導や支援 ・自宅の環境整備の支援
・各種医療処置(気管内吸引、床ずれ等創傷の処置、注射や点滴の実施と管理、呼吸機器の管理、胃管や尿管など各種チューブの管理、胃ろうや人工肛門/膀胱の管理、投薬、採血 など)
・各種機能訓練(リハビリテーション) ※状況に応じて療法士が訪問する場合もあり
ご自宅で療養に必要な環境等が整っていれば、重症度が高くても在宅で対応できることの範囲はだいぶ広がっていますし、社会の高齢化や在宅医療の推進が進む中で、訪問看護の利用者数は年々増加し続けています。

5.介護保険における訪問看護サービス

先ほども触れたとおり、40歳以上の介護保険被保険者で要介護・要支援認定を受けていると、一部例外はあるものの原則として医療保険ではなく介護保険での訪問看護サービスの利用となりますが、実は介護保険における訪問看護サービスにもいくつか種類があり、利用者の要介護度などによって受けられるサービスに違いがあるので注意が必要です。

●訪問看護
ここまでで説明してきたような、病院・診療所もしくは訪問看護ステーションによる訪問看護です。
要介護・要支援認定を受けていればどの要介護度であっても医師の指示により利用可能です。
なお要支援認定の方は「介護予防訪問看護」サービスとなります。
原則として平日日中の訪問となりますが、施設により緊急時など時間外の対応が可能な場合もあります(時間外割増料金あり)。

●定期巡回・随時対応型訪問介護看護
市町村が主体の介護保険サービスである「地域密着型サービス」のひとつで、お住まいと同一市町村内にある近くの事業所から、1日に複数回の定期的な訪問や、利用者の要望に応じた随時の訪問も受けることができる24時間365日対応可能型のサービスです。
要介護1~5に認定された方が利用することができます。
サービス回数にかかわらず月ごとの費用が定額なので、頻繁な訪問対応が必要な場合でも費用負担が増える心配がありません。

●看護小規模多機能型居宅介護〈複合型サービス〉
同じく「地域密着型サービス」のひとつで、利用者の状況や選択に応じて、訪問・通所・短期入所の3つの介護サービスと訪問看護サービスとを組み合わせて利用することができるサービスです。
医療(看護)的ニーズが高くても、柔軟にさまざまなサービスを活用しながら自宅で暮らし続けたいという方にとっては、自宅から近い1か所の事業所で一体的にすべてのサービスを受けることができ、どのサービスを利用してもスタッフや利用者が共通しているため、意思疎通や交流を図りやすいという利点があります。
こちらも月ごとの費用は定額となっており、要介護1~5に認定された方が利用できます。

以上のように、医療的ニーズのある要介護の方が住み慣れた自宅で暮らし続けるために、訪問看護はなくてはならないサービスのひとつとなっています。
医療と介護にまたがるサービスであるため、保険の適用をはじめ、やや複雑な部分もあって利用するのにハードルが高く感じられるかもしれませんが、医療と介護の連携の取り組みも進んでいますので、主治医やケアマネジャーなどと相談しながら、それぞれのニーズに合ったサービスを選択し利用していくと良いでしょう。

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