介護にまつわるあれこれ2:在宅介護とは

在宅介護とは、いったいどのような介護のことを言うのでしょうか。
文字通りに受け取れば、自宅にいながら受ける介護、という意味になり、もちろんそれも1つの正解です。
あるいは「介護保険制度」という規定の中でみてみると、在宅介護とは、自宅、もしくは私費で入居する有料老人ホーム等の居室で生活しながら受ける介護のことをさしています。
なお介護保険制度では、在宅介護と対になるのが「施設介護」であり、こちらは介護保険制度に基づいた「介護保険施設」に移り住み、そこで介護を受ける場合をいいます。(ちなみに介護保険施設には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院などがあります。)
2020年4月時点の介護保険制度上の介護サービス利用者の数は、施設サービスが95万人なのに対し、在宅サービスでは384万人と約4倍にものぼります。
介護保険制度を介さずに、自宅で家族もしくは私費サービス等で何らかの介護や支援を受けている高齢者も多数存在することを考えると、在宅介護とは、私たちに一番近い介護の形態である、ととらえることができるのではないでしょうか。
今回は、在宅介護について、少し細かく見ていきたいと思います。

1.自宅内で介護を受ける

在宅介護(居宅介護とも言います)で一番想像しやすいのは、自宅の中で受ける介護かと思います。
同居や別居の家族が日常生活上の世話や手助けをすることももちろん含みますし、公的もしくは民間の「訪問サービス」もあります。
自宅に来てもらう訪問サービスの中でよく耳にするのはおそらく、「訪問介護(ホームヘルプサービス)」や「訪問看護」などかと思います。
訪問介護では介護福祉士やホームヘルパー(訪問介護員)が、利用者の必要に応じた身の回りの世話や家事などの生活支援を行います。
訪問看護は、医療が必要な利用者を病院や訪問看護ステーション等の看護師や保健師が訪問し、主治医と連絡をとりながら、病状の観察や必要な処置・リハビリなどを行います。
これらのサービスは、介護保険制度による要介護認定を受けていれば、介護保険を利用した負担額でサービスを受けることができますし、認定外や介護保険の限度額を超えた場合は私費で受けることも可能です。
また、介護保険以外のサービスとしては、民間による有償の家事援助サービスや配食サービス、理美容サービス等があります。
地域によっては、市町村が家事援助や配食サービス等を実施している場合もあります。
最近の傾向としては、中~重度の介護状態になっても自宅で暮らし続けられるため24時間対応の訪問サービス等の充実が図られるとともに、反対に要介護認定に該当しないような、元気で、いわゆる自立されている高齢者が、ちょっとした手助けがほしいというような場合のサービスや、健康状態を維持するための支援なども増えてきています。

2.自宅から施設に通って介護を受ける

訪問サービスに対し、利用者側が施設に出向いて介護サービスを受けるのが「通所サービス」です。
自宅から通って利用する形式になるため在宅介護に含まれ、原則として要介護認定を受けた方が利用するサービスになります。
では通所サービスにはどのようなものがあるかと言うと、「通所介護(デイサービス)」や「通所リハビリテーション(デイケア)」が挙げられます。
デイサービス、デイケアという名称のほうがよく使われていて、聞きなじみがあるかと思います。
どちらも自宅から送迎車などで施設に通い、食事や入浴、レクリエーション(デイケアの場合は加えてリハビリ)などをして、日中を過ごすものになります。
通所サービスは、家族の不在等で日中を自宅で過ごすのが難しい場合や、家族の介護負担軽減、他の利用者や施設スタッフなど家族以外との交流やコミュニケーションによる社会性の維持など、さまざまな利用目的やメリットが存在します。
また利用回数については、特に規定等はありませんが、介護保険での利用には要介護度に応じて限度額があるため、それを超えた部分に関しては自費利用になります。
利用回数に関して、週2~3回の利用が全体の半数程度を占めているという調査結果もありますが、利用者本人や家族の要望もふまえ、施設側のケアマネジャーと相談しながら決めていきます。
なお、認知症の方を対象にした認知症対応型のデイサービスもあります。

3.自宅から一時的に施設に宿泊する

ふだん自宅で生活する高齢者が、短期間施設に宿泊しながら介護等を受けるのが「短期入所サービス」であり、こちらも在宅介護の一つとされています。
「短期入所生活介護(ショートステイ)」と「短期入所療養介護(医療型ショートステイ)」があり、やはりショートステイという名称のほうが聞きなじみがあるかと思います。
通常のショートステイは、特別養護老人ホームなどの介護保険施設に宿泊し、他の入居者と同様に、必要な日常生活上の介護を受けることができます。
医療型の場合は、医学的管理が必要な病状の方が介護老人保健施設などに宿泊して、通常のショートステイと同様の日常生活上の介護に加え、リハビリや医師の診察などを受けられます。
家族の介護負担軽減目的や、宿泊を伴う家族の不在時などに利用することができ、1回あたりの連続利用日数は30日までという規定がありますが、要介護認定だけでなく、要支援認定を受けた方も利用することができます。

4.訪問、通所、短期入所を組み合わせたサービス

ここまでに紹介した訪問、通所、短期入所の3つのサービスを組み合わせた「多機能型」のサービスもあります。
「小規模多機能型居宅介護」と呼ばれる介護保険サービスで、通いのサービスを中心に利用者の状況や選択に応じて訪問や短期入所を柔軟に組み合わせて利用できるというものです。
こちらは「地域密着型サービス」としてお住まいの市町村が提供する介護保険サービスのため、自宅から近い範囲でサービスを受けることができます。
多機能型ならではの特徴としては、1か所の介護事業所で一体的に3つのサービスを受けることができ、どのサービスを利用してもスタッフや利用者が共通しているため交流を図りやすいという点があります。
また費用が月ごとの定額で利用回数が増えても負担が増えないため介護費用のめどが立てやすい、臨機応変にサービスが選択でき場合によっては当日の変更も可能、といった利点もあります。
なお、介護に加えて看護も必要な方向けに、上記3サービスに訪問看護も組み合わせられる「看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)」もあります。

5.入居している居室が自宅とみなされる場合

有料老人ホームなどに私費で入居している方が要介護認定を受けた場合、入居しているホーム等で提供される、あるいは外部の事業者が提供する介護サービスを介護保険による自己負担割合で受けることができるようになります。
これは「特定施設入居者生活介護」という介護保険サービスにあたります。(入居しているホーム等が「特定施設」の指定を受けている必要があります。)
また、認知症の方が共同生活を送る「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」も、入居している居室が自宅とみなされ、共同生活を送りながら必要な介護や支援、リハビリ等が受けられます。
これらの入居系サービスも、自宅を拠点とした在宅介護サービスに分類されています。

このように、在宅介護といっても実に様々な介護の形態やサービスがあることがわかっていただけたかと思います。
また、介護の必要な度合いによって、介護保険の利用に限度があることも少なくありません。
今後、高齢化が進むとますます在宅介護の需要は増えていくことが予想されていますので、もしご家族やご自身に介護が必要になり始めたとき、まずは在宅で、適切にサービスを利用しつつ、支援や介護を行っていく、受けていくという心構えでいることが大切なのではないかと思います。

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