介護にまつわるあれこれ1:介護ってどんなこと? どこからが介護?

介護問題、介護保険、介護サービス…と高齢化社会の日本では日々、当たり前のように「介護」という言葉が飛び交っていますが、皆さんは、介護についてどのくらい知っていますか?
介護というと、寝たきりの方の食事の介助や排泄の面倒を見たり、あるいは車椅子生活の方の移動を手伝ったり…というようなイメージが浮かんでくるかもしれませんが、実は介護には、もっと身近で、より些細なことも含まれているのです。
ここで改めて、介護とはいったい何なのか、少し見つめなおしてみましょう。

1.介護とは

広辞苑で介護の意味を調べてみると、次のように書いてあります。
「高齢者・病人などを介抱し、日常生活を助けること」
ちなみに「介抱」も調べると「世話をすること」とあるので、つまり介護とは、「高齢者や病人の日常生活の世話をして助ける」ことなのです。
では、日常生活とはいったいどんな生活なのでしょう?
皆さんご自身、あるいはご家族など身近な方の日常生活を思い浮かべてみてください。
朝起きて、身支度を整え、朝食をとる。
昼間は買い物や用事で外出する、あるいは家で洗濯や掃除などの家事をする、昼食を食べる。
夜は夕食を済ませ、お風呂に入り、就寝。
合間にはトイレに行ったり、余暇に趣味や娯楽を楽しんだりする。
くごく当たり前の、誰もに必要で、ふだん日々していることの積み重ね、繰り返しが日常生活です。

2.些細なことも「介護」である

この日常生活はどんな人にも存在しますが、高齢者に限ってみると、年齢や持病などにより、100%自分で行うことが難しくなってくることがあります。
スーパーで必要な物を選んで買うことはできても、重い荷物を自力で運べない。
今まで自宅から徒歩とバスで通っていた場所へ、足腰が弱り一人で行くのが不安になってきた。
例えばこういった場合に、付き添ったり荷物を持ってあげたり、あるいは送迎をしてあげるのも介護です。
一見そうは思えなかったり、あまり意識しないでやっていたりするかもしれませんが、ほんの些細なことでも介護になるのです。
育児、子育てに置き換えて考えてみると、少しわかりやすいかもしれません。
赤ちゃんの頃には、食事は大人が一口ずつスプーンで離乳食を口に運んであげて食べさせます。
3歳くらいになれば、自分でスプーンを使って食べることができるようになり、赤ちゃんの頃に比べればだいぶ手はかからなくなりますが、大人は、のどに詰まらせたりしないかを近くで見守ったり、食べやすい形状にして食事を出したりしています。
親であればこれを「子育てをしている」とわざわざ意識はあまりしないかもしれませんが、赤ちゃんの頃も、3歳の頃も、どちらも「育児」と呼べる行為だと思います。
介護も同様に、食事、入浴、排泄など日常生活に欠かせない行為についても、様々な介護があるのです。
入浴ひとつとっても、本人が行うのを見守るだけで十分な場合もあれば、背中を洗ったり浴槽をまたぐときに支えるなど部分的な介助が必要な場合など、具体的にやるべき内容は一人一人の介護度によって様々です。
さらに車椅子生活や寝たきりの状態となってくれば、リフトや寝台等特別な装置を使用した入浴設備を使った全面的な介助も必要になってきます。
あるいはまた、身体的には元気でも、判断力や理解力で心配な面が出てくることもあります。
例えば筆者は最近、高齢の母の携帯電話の買い替え(携帯会社の乗り換え手続きからデータ移行まで)の一連の手続きをすべて代行して、これも介護の一つだなと実感しました。
母は一人暮らしで要介護度的な観点で言えば完全自立のアクティブな後期高齢者ですが、機械の操作や契約ごとには理解しきれないことや面倒に感じてしまうことが多くなってきたようです。
このような軽度の生活援助や基本的に自立した高齢者への手助けであっても、時間の拘束や自立した相手だからこその自尊心への気遣いなども含め、決してラクとは言い切れません。
体力的な負担が大きい介護だから大変、軽度で短時間の援助ならラク、と決めつけられるものではなく、また介護者への負担は様々な要素が絡みあっていて、他と比較してどうこう言えるものでもないのです。

3.介護問題は誰にでも訪れる

こうして考えてみると、高齢者における介護は決して特別で特殊なことではなく、どの高齢者どの家族にも程度の大小はあれ、いずれ訪れるものと考えたほうが良いかと思います。
日本にはまだどうしても、介護が必要となった高齢者の面倒はその家族が担うもの、という風潮が根強くあるように思います。
ですがその一方で、核家族化の進行とともに高齢者の夫婦二人暮らしや一人暮らしが増え、家族内での助け合いだけでは難しくなっている現実もあります。
もちろん、自分の配偶者や親が要介護状態になったときに知らん顔で良いと言っているわけではありませんし、逆に家族だけでも協力してうまく介護できる場合もあるかと思いますが、それぞれの状況や家族の事情に応じて公的サービスや民間サービスを利用・活用するなど、お金を払ってプロに任せることも、なにも後ろめたく思うようなことではないのです。
他人が家に入ったり、身の回りの世話をすることに良いイメージがわかないという方がまだまだ多いのも事実ですし、そういった考えが間違っているというわけでもありません。
ただ、これからの介護は、家族の中だけで完結するものばかりではなく、現実的に地域や社会全体で高齢者をサポートしていく側面も必要ですし、家族か家族でないかにかかわらず、信頼のおける相手に介護をしてもらえる、介護する側も責任感や誠意をもって介護をできる、ということが大切なことの一つになるのではないかと思うのです。
今後もし高齢者の介護の問題に直面したり、考えるようなことがあったときには、これらのことを少しでも頭の片隅においてもらえたらいいのかなと思っています。

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