高齢者医療福祉の今とこれから1:どうなる?20年後に高齢化のピークを迎える日本の医療

日本が高齢化社会と言われるようになって久しいですが、皆さんは具体的な日本の人口動向や高齢化の実情をどのくらいご存じでしょうか。
実は、すでに長らく高齢化社会と言われているにもかかわらず、日本の高齢化は今から約20年後の2042年頃にピークを迎えると予測されているのです。
その頃、日本の医療福祉や介護はどうなっているのでしょうか。
今回は、少しその内容を紐解いていきたいと思います。

1.総人口は2010年をピークに減少中、22世紀には明治時代の水準に⁉

日本の総人口は、2010年の約1億2,808万人をピークとしてその後徐々に減少し、2022年8月現在では1億2,478万人となっています。
この減少傾向は今後も続いていく予想となっており、2040年頃には1億人を下回る推計がされています。
ちなみにさらに長期的な推計では、出生率の回復が見られない場合、約80年後の2100年頃には人口が4,300万人程度まで減り、およそ200年前(明治時代後半)の水準に戻るという予測もされており、この変化は1000年単位でみても類を見ないほどの急激な減少だと言われています。

2.増え続ける高齢者人口

このように、日本の総人口の減少は10年以上前から、この先もずっと続いていくのですが、その人口の具体的な内訳をみてみると、65歳以上の高齢者の人口だけは増加しているのです。
高齢化社会を見据えて介護保険制度が制定された2000年の時点で、65歳以上の高齢者の人口はおよそ2,156万人でしたが、2021年時点では1.7倍の3,579万人にまで増えています。
そしてこの先、2025年には3,677万人となり、今から20年後の2042年には3,935万人でピークを迎える予測です。
さらには、高齢者の中でも特に75歳以上の後期高齢者が全人口に占める割合が今後は増加していくことが予想されていて、2055年には総人口の25%を超える見込みだと言われています。
また、その中の85歳以上の人口を見てみると、2015年から2025年までの10年間は75歳以上人口を上回る勢いで増加し続けており、2035年頃まではそのまま一貫した勢いで増加する予測となっています。
一方で、就業者人口に影響する18歳以上65歳未満のいわゆる「現役世代」人口は、2025年以降急激に減少していくことが指摘されています。

3.高齢化のピークに向けた医療福祉介護の対策は?

このような状況の中で、今後の日本の医療や介護はどうなっていくことが考えられるのでしょうか。
まずは当然ながら、要介護認定を受けたり、介護保険サービスを利用する人数がふえます。
それに伴う給付金額の全体的な増加はもちろんですが、85歳以上の超高齢者の増加により、一人当たりの給付費も急増する予想になっています。
現役世代人口の減少を考えると、財政面でも、サービス提供のためのマンパワーの面でも、決して楽観視できる状況ではないと言うことができます。
このようなことを踏まえ、国は現在、2040年を見据え「誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現」を目指し、以下のような政策を打ち出しています。

①より少ない人手でも回る医療・福祉の現場を実現

②誰もがより長く、元気に活躍できるような取り組みの推進
●多様な就労・社会参加のための環境整備
●健康寿命の延伸
●医療・福祉サービスの改革による生産性の向上
●給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保

③社会保障の枠にとらわれない、農業・金融・住宅・健康な食事・創薬など関連する政策領域との連携

4.人口バランスの変化と長寿社会への対応が求められている

これらの政策は、総人口において高齢者が高い割合を占める中、現役世代人口が急激に減少するという2040年に向けて、医療や介護を必要としない、経済的にも身体的にも自立した元気な高齢者をできるだけふやすとともに、医療福祉分野におけるロボットやAI、ICT等の実用化などでかかる手間や人手を減らし、医療福祉への負担を減らそうという考えです。
また、高齢化、つまり長寿が進む中、いかに元気に暮らすことのできる期間(=健康寿命)を延ばすかということも一人一人の長い老後を考える上では大切になってきます。
働く意欲・能力のある人は高齢者であっても働ける環境や制度の整備が、労働者人口の減少を補うことになったり、健康寿命の延伸ともかかわってくるというわけなのです。
2040年以降は、ちょうど2000年頃の就職氷河期時代に新卒社会人だった世代が60歳代に差し掛かる時期でもあり、非正規雇用が多く、今までもワーキングプアの問題が取りざたされていた世代が高齢者となる前に、こういった就労に関する政策を整備し機能させておくことはとても重要なことであるとも言えます。
もちろん、これらの政策や課題が本当にすべて理想通りに実現されるのかはまだわかりませんし、疑わしいと感じる方も少なくないかもしれません。
でも、高齢化と働き手の減少とが必ず進む中では、何かしら現状とは違う変化が社会全体、生活全般に起きているだろうということはなんとなく想像はできるのではないかと思います。

20年後、皆さんは何歳になっていますか? 数少ない現役世代として社会を支える側、あるいは高齢者世代に差し掛かるも現役並みの役割を求められる側、はたまた後期高齢者や超高齢者となって老後を送る側、またはそれを支える子や孫世代…と様々な立場があるかと思いますが、どの立場だとしても、今とは多少違った医療福祉体制やそれをとりまく環境の中で生活している、生活せざるをえないだろうということがある程度予想できたかと思います。
少し先の未来や展望を知ることで、自分や家族のライフプランに生かしたり、老後に備えたり、健康について考えたりする一つの機会にしてみてはいかがでしょうか。

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